あとがき

 三年ほど前から、釣りを中心に、何か随筆ふうの本を書けと、熱烈にすすめてくださったのは、ある出版社にお勤めの、釣友藤井邑知(おうち)さんであったが、まとまった時間もつくれない忙しさに、そのままになっていた。
 去年の夏、ひょんなことから休みがとれ、河口湖で舟遊びをしているところへ、二見書房の多田さんが見えて、新しいお誘いを受けた。たまたま、その気になっていたところでもあり、書きはじめてみると意外に捗った。出版は二見書房さんにお願いすることになったが、最初の火つけ人、藤井さんのお勧めがあったればこそで、心からお礼を申し上げたい。
 内容の一部に、かつて、「太陽」、「へら鮒」などに載せた旧稿を加えさせていただいた。それぞれの雑誌社の御厚意に感謝している。
 文中、数々の先輩友人に無断で登場をお願いした無礼をお許しいただきたいと思う。みな、それぞれに、私の敬愛措く能わざる人たちばかりである。
 図版や写真をお願いした根本良一さん、巻頭の、私の写真を撮ってくださった写真家の前田宗夫さん、それに二見書房編集部の多田勝利さんの御苦労にも、心からお礼をいいたい。
 世は、滔々として、「固いこと言うなよ」の安直時代に、私のような面倒な文章を、はたして何人の読者が受け入れてくださるものかと、読みかえしてみて甚だ心細いのだが、少しでも新しい知已にめぐり合えたら、こんな嬉しいことはない。

あとがき−投網差し込み写真(釣りひとり)

二見書房から刊行された「釣魚名著シリーズ 釣りひとり」です。ときおり古書店などでも見かけることがあります。濃いグリーンの、今では、少なくなってしまった布張りの装丁になっています

 それにしても、こんな地味な文章をとりあげてくださった二見書房さんに敬意を表したい。特に、巻末の「へら竿」論議は、いささか専門にわたり、一般の読者には必ずしも快適な読物ではないかもしれないが、これを欠いては、私という人間の本音を汲んでもらえないような気がして、強引に加えていただいた。御面倒でも御精読いただければ幸せである。